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#キッズ&ヤング

親に捨てられたことが今でも辛くて

6歳の時に両親が離婚して、僕はおばあちゃんに育てられました。父親からも母親からも僕は捨てられたのです。そのことを考えると、今でも泣きたくなります。ふつうは離婚しても、父親か母親のどちらかが育てるものでしょう。でも僕はどちらからも大事に思われなかった子なのです。おばあちゃんは優しくて、僕をかわいがってくれて、これからも僕のしたいことは何でも応援してあげると言いますが、でも僕は辛いのです。親が僕を必要としなかったことが。それを思うと、自分は何をやってもダメなんじゃないかと思ってしまいます。 (高1:ひろと)


6歳の子どもがいるのに、離婚を決心されたとは、ご両親の間によほどのことがあったのでしょうね。外からは、理解できないような。まして、その間にいる子どもには。

だからお祖母さまも詳しい事情には触れずに、今日まであなたを一生懸命育てて来られたのだと思います。

詳しい事情はわかりませんが、お手紙では、よほど心の優しいしっかりしたお祖母さまのように思います。おそらくご両親は、そのお祖母さまへの信頼があって、自分たちどちらか一方が育てるよりも、お祖母さまに預けたほうがあなたの幸せになると考えられたのではないでしょうか。それも、子どもへの愛の一つの「かたち」かもしれないと、私は思います。

離婚前には長いこと、ご両親の間にもめ事があったでしょうし、結果として子どものあなたを巻き込んだことで、ご両親はあなたを可哀そうだった、済まなかったと思っておられたことでしょう。でも離婚後のお2人には、離婚前よりもある意味でもっと厳しい状況が続くかもしれない。子どもの幸せを思ったら、それ以上辛いことをあなたに経験させたくないと、あなたをお祖母さまに預けることを決断されたのだと思いたいし、事実、そうだったのだと思います。

たしかに親から愛され大事にされた経験は、その人の自尊感情(自己価値観)を築く基本になると言われます。でもこれからあなたは、沢山の人の中で生き、沢山の仕事をして、沢山の人に愛され、尊敬される生活を送られることでしょう。その中で、自分への信頼や価値の感情は、しっかりできあがっていくことでしょう。

思春期や青年期は、誰もが自分の価値や生きていく意味を探ろうとして思い悩む時期です。今のあなたはその時期にいるのでしょう。

高1のあなたにはまだ難しいかもしれませんが、子どもがいても離婚しなければならなかったご両親のご事情やお気持ちも、大人になってから、分かる日がくるのではないでしょうか。どんなに聡明な子どもでも、大人になってみないと分からないこと、また、人には、経験しないと分からないことが沢山あるのです。

しばらくは、つまらぬことをウジウジと考えず、いい高校生活を送ってください。なお、お祖母さまをくれぐれもお大切に。

深谷和子(東京学芸大学名誉教授:こども支援士)