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#キッズ&ヤング

お母さんに「人のことは悪く言ってはいけません」と言われたけれど

学校の友達のカナちゃんがうそをついて、みんなに「うそつき」と言われたの。わたしもうそをつくのはよくないと思うから、みんなといっしょに「うそつき」言ったの。お母さんにそのことを話したら「人のことを悪く言ってはいけません」と言われました。うそをつくことは悪いことなのに、なぜお母さんにそう言われたのかわかりません。(小3:なみ)


なみさんは、カナちゃんがうそつきな子だと、お母さんに分かってほしかったのですね。でも、逆になみさんのほうがお母さんに叱られたので、納得(なっとく)がいかないのでしょう。

ここには2つの問題があって、分けて考えた方がいいように思います。1つ目は、人のことを悪く言うことについて、2つ目は、うそをつくことについて。

一つ目です。だれかが悪いと思ったら、その子にちょくせつ言うのはいいけれど、第三者(別の友だちなど)に悪口を言うのはよくないことは、かなさんも分かっていると思います。  

相手が悪いと思っても、なかなか相手に直接(ちょくせつ)は言いにくいもの。それで、もやもやした気持ちをはらすため、他人に言って、同意(どうい)を求(もと)めようとします。それがどんどん広がって、みんながだれか一人を悪者(わるもの)にしてしまうことがよくあります。一人では言えなくても、「みんな、いっしょ」だったら、簡単(かんたん)に「うそつき」と言えてしまう。カナちゃんが、うそをついたのが事実(じじつ)だったとしても、その後、みんなでカナちゃんをわるものにして攻撃(こうげき)すると、それは「いじめ」になってしまう。お母さんが伝えたかったのは、そのことだったのではないかと思います。

2つ目の問題、うそをつくことについて考えてみましょう。

人はだれでも、時々うそをついてしまいます。でも、人を困らせるためにわざとうそをついたり、しょっちゅううそをつくことは、問題です。よく、「わたしのことが信用できないの?」と言う人がいますが、「信用」と言うのは、その人自身がもってるもので、うそをつくたびに自分の信用がなくなっていくのです。

一つうそをつくと、そのうそをごまかすために、またうそを重ねなければならなくなります。そうすると、どんどん信用がなくなっていきます。もしカナちゃんがそういう子だったら、「信用」も「友だち」もなくしていくことになります。クラスの仲間(なかま)として、勇気をもって立ち直らせてあげてほしいと思います。

ただ、それは簡単(かんたん)ではありません。「自分を変えることはできるけれど、他人を変えることは難(むずか)しい」と言われます。親切な気持ちでアドバイスしても、なかなか素直(すなお)に受け取ってもらえないかもしれません。「正直」とか「誠実(せいじつ)」は、人格(じんかく)つまり人間としての「ねうち」にかかわることですから、「うそつき」と言われるのは、人格(じんかく)そのものを否定(ひてい)されたと感じるのですね。

でも、友だちからの心をこめたアドバイスなら、カナちゃんも受け入れてくれるかもしれません。カナちゃんに、うそをつかなくても安心してつき合える友だちがふえたら、カナちゃんももっといい子になっていくのではないでしょうか。

上島 博(葛城市立磐城小学校 講師・こども支援士)