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#キッズ&ヤング

遊びなのかイジメなのかよくわからない

小学校からいっしょだった友だちが、最近、遊びながらプロレスの技をかけてくるようになりました。「痛い!やめて」と叫ぶと、よけいに面白がってふざけてきます。なんだかもやもや気持ちになって、学校を数日休んだら、登校したとたん首に手をまわして、「マジ、心配したぞ。今度休んだらリンチだ」と笑いながら言ってきました。どう返事したらいいのか分からなくて、胸が苦しいです。 (中1:けんすけ)


その友だちは、どうしてプロレスの技をかけてくるのかな。君が「痛い、やめて!」と叫んでもやめてくれないし、君がこんなに悩んでることも何でわからないのかなぁ。小学校からの友だちなのにね。君も「そんなことをする君は、もう友だちなんかじゃない」って言えたらいいのに、なぜ言えないのか。なぜ先生に言いつけないのか。でも、その友だちは遊びの中で、君が嫌がっていることを知ってるのに、君の欠席を自分のせいかと心配する気持ちもあるんだね。人間ってフクザツな生き物だね。

君は今、友だち関係について真剣に考えてるね。もしかしたら始めてのことかもしれないなぁ。いやなことをされてても先生に言いつけないで、なんとか自分で解決しよう、友だちと仲良くしようと苦しんでる。誠実で真面目な君に、私は感心したよ。それって、えらいとは思うけど、でも「ちょっと違うんじゃないか」という気もするよ。

もう少し私の話を聞いてくれるかな。

君はまだ、自分の苦しみをまわりの誰(だれ)にも言ってないね。友だちに「やめて!」ともっと強く言ったら、リンチされちゃうかもしれない。家族や先生、ほかの友だちに言ったら、仲間から「チクったな!」と逆切れされるかもしれない。「たかが友だちとのことで、言いつけ口をするなんて、ヒキョウな奴(やつ)だ」と言われるかもしれない。そう思ってじっとガマンしてるんじゃないかな。

でも、君の「こころ」や困ってることは、言葉にしないと、ほかの人にはわからないんだよ。それから、本当に困った時に人に助けを求めるのも、決してヒキョウなことじゃないんだよ。

学校にはスクールカウンセラーがいるのを知ってるね。生徒が困ってる時、相談に乗ってくれる先生だよ。まずそのスクールカウンセラーの先生に、友だちとのことで君が苦しんでることを相談してみよう。そのために保健室にいる先生なんだから、君が相談しても、それは友だちをチクることでもないし、ヒキョウなことでもないんだよ。

ちょっと難しい話になるけれど、人間が成長するって、多くのことを手に入れるけ

ど、同時に、何かを無くすこともあるんだよ。高校の入学試験を受けたとき、君が合格した学校で行きたい学校が2つあっても、入学できるのは1つだけ。友だちとの関係も、みんなと仲良くできたらいいけど、好きなことや考え方など、自分とは合わない人が出てくることもあるよね。「みんな違ってみんないい」ってコトバ、聞いたことがあると思うけど、でもなかなかそういう気持ちにはなれないね。みんなと仲良くしようとすると、本当の自分がわからなくなっちゃうこともある。自分に合う人を選ぶと、そうでない友だちをなくすこともある。

君がプロレスの技をかけてくる友だち選ぶか、それともすてちゃうか、よくよく考えてごらん。そして、どうしてもわからなかったら、スクールカウンセラーの先生のところに行く「勇気」も必要だと思うけど。

小澤貴史(拓殖大学准教授・公認心理師)