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#キッズ&ヤング

ぼくの工作をお父さんがすててしまいます

ぼくは、学校のずこうが大すきです。でも、つくったものをいえにもってかえると、おとうさんは、「いらないだろう」といってすててしまいます。いま、ずこうで、「どうぶつむらのピクニック」というのをやっていて、ぼくは、ライオンを作っています。かおをかみのおさらでつくって、たてがみは、おうどいろとちゃいろの毛糸でふさふさに作っています。ぼくは、とっても気にいっています。先生も「わあ、かっこいい。できあがったら、おうちにかざるといいね」とにこにこしながらいってくれました。でも、もってかえったら、きっとまたおとうさんにすてられてしまいます。やだなあ。 (小1 なおき)


はじめ、信じられなかったわ、そんなひどい話。子どもが工作で作ったものを、親(おや)にはガラクタに思えても、「いらないだろう」と言ってすててしまうお父さんがいるなんて。チラシで折った紙飛行機(ひこうき)でも、大事なものはあるし。

でも、よくよく考えてみたの。お父さんがひどいんじゃなくて、なおき君が、そうさせてしまったんじゃないかなと。なおき君のお家を見ないで言(い)うんだけど、作った物を、いつもそのへんにおきっぱなしにしていたんじゃないかな、と。お家の人は、めいわくしてたのね、きっと。

お父さんは何度か「片づけなさい」「いらない物は捨(す)てなさい」と言われたんだと思うけど、なおき君の耳にはとどかなかったのね。そうなら、強行作戦(きょうこうさくせん)。「いらないだろう」とすててしまう。だから、お母さんもそばにいて、何にもいわれなかったんじゃないかな。 

もし、なおき君の家で、みんなが自分の大事なものをその辺(へん)に出しておいたら、どうなると思う?たちまち家はゴミ屋敷(やしき)。だからお父さんは、それをなおき君に教えようと「これは、いらないだろう」とすててしまう作戦に出たのね。

お父さんもお母さんも、ほかの人たちも、おとなは何十年も生きてきた人たちだけど、いらないものをどんどん捨(す)てながら暮(く)らしてきたの。大事なものは、思い出の中にしまっておくとか、外の物置(ものおき)の箱にしまっておくとか、ときには写真(しゃしん)にとるとか。

なおき君も、片付けることや、捨てることや、大事にしまっておくことを覚(お)ぼえながら、おとなになっていくのでしょう。工作で作ったライオン君は、「捨てないでね」と張(は)り紙をして、自分のお部屋(へや)に大事においておけばいいんじゃない?

深谷和子(東京学芸大学名誉教授・こども支援士)