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#キッズ&ヤング

先生の行動が許せません

先生の行動が許せないです。2年生の時に、遠足の絵を描かせた先生のことです。私は遠足に行っていませんでした。なぜなら、その日はお母さんが家を出て行って、帰って来なかった悲しい日だったのです。先生はみんなに「きのうの遠足の絵を描きなさい」と言いました。ぐちゃぐちゃに描いた私の絵を見て先生は、私を叱りました。今でも、その先生を許せません。(小6:ひかり)


悲しい日だったね、ひかりちゃん。お母さんは、まだ帰ってこないんだね、きっと。3年たっても、まだ。

お母さんは、いいお母さんだったんだろうね。ひかりちゃんのことを大事に思ってくれる、やさしいお母さんだったんだと、私は思うの。

いつもとは違う絵。いつものひかりちゃんらしくない色とぐちゃぐちゃの線で描かれた絵。何かあったのかしらと、その日、ふしぎに思わなかったのかな、先生は。それなのに先生がひかりちゃんを叱ったのは許せないよね。「先生」なのに、だめな先生だ!

ひかりちゃん。その先生を許さなくていいよ。ずっとずっと、ひどい先生だったと思っていていいんじゃないかと、私は思うの。

なぜなら先生を許せない気持ちは、ひかりちゃんを置いて出て行ってしまったお母さん、大事なひかりちゃんに、わけも説明しないで出ていってしまったお母さんへのひかりちゃんの気持ちと、どこかでつながっているような気がするの、私には。

大人の世界は、よくわからないことや複雑(ふくざつ)な出来事でいっぱい。ひかりちゃんにも、お母さんの気持ちや、お母さんをずっと取り巻いていた様々の事情(じじょう)が、いつか分かる日が来るかもしれない。

その日まではずっとずっと、今の、その先生を許せない気持ちのままでいていいんじゃないかと、私は思うよ、ひかりちゃん。

その長い苦しい経験が、ひかりちゃんを、誰よりも「やさしくて強い心の持ち主」にしていくんじゃないかと、私は思うの。

深谷 和子(東京学芸大学名誉教授、こども支援士)