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#キッズ&ヤング

かわいいものがほしいのに

うちは2人家族で貧乏なんです。友だちはみんな、かわいいものとかすてきな服とか持っていていいなと思うけれど、買ってほしいとは親に言えません。母はいつも疲れていて、話もあまりできません。不幸な私なんかいない方がいいのかと思うこともあります。(中1:まな)


まなさんのうちは貧乏でお金がないから、すてきな服も、みんなが持っているようなかわいい小物も買ってもらえなくて悲しいのね。でもまなさんは、お母さん思いのやさしい子だから、毎日お仕事にがんばっているお母さんを見ると、ほしいものがあっても、言わないでがまんしているのね。

お母さんも「他の子と同じようにしてあげたい」「まなに、ほしいものを買ってあげたい」「やりたいことをやらせてあげたい」と思っているのよ、きっと。「でも、お金がないからしてあげられない。ごめんね」と心が痛くなるほど、思っているのだと思います。お母さんは、まなさんの幸せを誰(だれ)よりも願っているはず。だからお母さんも悲しいのよ、きっと。

でも、まなさんにはお母さんがいて、ちゃんと住む家と寝る場所もあるじゃない。学校にも行けて、友だちもいっぱい。全然「不幸」なんかじゃないと私は思います。ほしい服や小物が買ってもらえないのは、少しつらいかもしれないけれど、つらいのは、もう少しの間だけ。だって高校生になれば、まなさんはアルバイトもできて、今、ほしいと思っている服や小物も自分で買えるようになるじゃない。それができない今が、そんなに不幸かなぁ。世の中にはいろんな子がいるの。ちょっと私の話を聞いてくれるかな。

私の友だち(大人です)に、「子ども食堂」のお手伝いをしている人がいるの。まなさんのようないそがしいお母さんの子どもたちや、その家族、近所のお年寄りも利用しているのが「子ども食堂」なのね。

あたたかいご飯を、家族でない人たちとみんなで食べたり、ちょっと勉強したり、遊んだりできるのが「子ども食堂」。子どもだけでなく、いそがしいお母さんやお父さんも利用したりして、ほっとできる場所になっているんだって。おなかもいっぱいになるけれど、食べるだけの場所じゃなくて、心もいっぱいになるんだって。中学生だけでなく、部活が早く終わった高校生も来て、自分のことをたくさん話したり、話を聞いてくれたり。時々はそのお母さんやお父さんも来て、いっしょにごはんを食べるんだって。大きな家族になっているみたい。そんな世界もあるのね。

疲れて帰ってくるお母さん。話もあまりできませんなんて言わずに、これからもそっとお母さんに笑顔を向けて、お母さんの心をほっとさせてあげてほしいの。おなかもいっぱい、心もいっぱい。まなちゃんとお母さんでつくる「子ども食堂」かな。

佐々木教子(北区立なでしこ小学校教諭・こども支援士)