お母さんが怖いです。

私は、ずっとお母さんの言うことを、そのまま聞いてきたような気がします。小学校の頃から、友達のこと、クラブのことなどなど、いつもお母さんの考えがあって、自分の考えを言えなかった気がしています。「高校受験は大変だから、中学から入ったほうが楽だよ」と言われて、そうかなあ？と思って、今の学校を選びました。でも、この頃、自分はこれでいいのかと思うようになりました。お母さんに自分のことを言いたくても、いつも言い負かされて、最後は言いなりになってしまいます。お母さんはすごく怖いです。でも、この間、いつもお母さんが作ってくれるお弁当を、お母さんといっしょに作ったの。お母さんは、きげんが良かった。私は嬉しかったです。いつもお母さんが、こんなふうにきげんがいいと気持ちがいいなと思いました。

（中1：凛）

凛さん、お電話ありがとう。凜さんには、最近、お母さんとの毎日で、これでいいのかと、悩むきっかけがあったのね。１つ目は、中学の同級生が自分の意志でこの学校に入ってきたと聞いたこと。２つ目は、この頃お母さんの言うことに素直になれなくて、お母さんに嫌な態度をしたり、自分の気持ちを上手く伝えられなくて、部屋に閉じこもったりしてしまうこと。

凜さんがたくさん話してくれたことを整理してみたの。

１つ目。凜さんは、お母さんの言いなりになっている自分がいやになってきたのね。お母さんは、今まで自分の言うことを聞いて良い子に見えた凜さんの態度に驚きながら、「黙ってないで、自分の考えを言いなさい」と言いながら、何で言うことを聞かなくなったのだろうと悩んでいるのかもしれないね。少しずつ成長して、自分の考えを持てるようになった凛さんと、今まで上手く育ててきたと思っているお母さんとの心の戦いかもしれないね。

親子の関係は簡単ではないのね。この間NHKの番組で、凛さんのような悩みを抱えた親子関係の番組を観ました。

「あなたのために」と言いながら、子どもを�@過保護にする�A干渉しすぎる�B否定する�C話を聞かない�D抑えつける�E進路に口出しする�F恋愛に口出しする�G子どもと張り合う�H嫉妬する　　などして、子どもを大事にしない親のことを「毒親」と言うのだそうです。

子どもは大人と違って、どんどん成長している。だから、自分でもあれこれ考えるようになるね。親は、良かれと思ってやったことが、全部裏目になって、子どもからは恨まれて、「毒親」なんて言われてしまうなんて悲しいね。親も子どもが成長するにつれて、成長しないといけないね。

凛さんは、お母さんとけんかして、おばあさんのところに行って、２、３日ぐらい生活したことがあったと話してくれたね。自分で自分のことをしなければならなくて、お母さんの大変さも分かったと言ったね。

２つ目。お母さんは、凛さんがお弁当作りができることを見て、凜さんが大人になってきたんだと、嬉しかったんだね。お母さんも、子どもに何でもしてあげるのではなくて、凜さんが自分からどんどんチャレンジしてやっていく姿を見たいのだと思います。

お母さんに「いっしょにご飯の支度したい」「洗濯物たたみます」「げんかんの掃除するね」と自分から言ってみたらどうかな。お母さんの笑顔が増えて、凛さんの出来ることも一つ一つ増えていくでしょう。きっと、そのうち、お母さんに自分の考えを言えるようになると思います。

動物は生まれてすぐに立って、短い時間で自分で生きていけるようになるけど、人間は動物の中でも、「独り立ち」するのにすごく時間がかかる生き物なの。でも大丈夫。凛さんが次のステップに行くまで３年間あるじゃない。今、自分を見つめ始めたのだから素晴らしいことだと思うの。お母さんも凛さんも、お互いが、自分の考えを一人の人間として、認め合えると、すてきな関係になっていくわ。あせらず、ゆっくりでいいのよ。

川�ｱ　佳子（こども支援士）