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#キッズ&ヤング

「母の日」のお母さんに手紙が書けなかった自分が嫌です

私が小学4年生の時、それまで長いこと病気だった母が亡くなりました。ショックでした。でも、自分は早く元気にならないといけないと思っていました。5年生になってクラス替えがありました。その頃、「新しいお母さん」が来ました。新しい母もいい母だったけれど、私を生んでくれた母ではありません。頭ではわかっていましたが。

5年生の「母の日」に「お母さんへ」の手紙を書く時間がありました。みんなは、いっしょうけんめい書いていました。私は、母を思い出すと涙が出て書けませんでした。だって私の母は、私を生んでくれた「古いお母さん」だからです。先生がそばへ来て「天国のお母さんに書けばいいんじゃない」と言いました。でも、私はもやもやした気持ちになって、書けませんでした。その時の情けない自分が今でもとても嫌です。(大1:ゆう子)


ゆう子さんには、生んでくださったお母さんと育ててくださったお母さんの二人のお母さんがいるのですね。どちらのお母さんもかけがえのない方でしょう。でも、小学校5年生では「なんで私のお母さんが」と反発すら感じるほど辛かったからなおのこと、天国のお母さんに書けないでいたのですね。

たぶんお父さんは、心のどこかで寂しくありながらも、ゆう子さんが女親を必要としている年頃であるのを心配して、新しいお母さんを迎えたのかもしれませんね。

今、育てて下さったお母さんに感謝しながら、いろいろな経験を積んで素敵な大人になったゆう子さんを想像しています。

朝顔の芽が出てきれいな花が咲くようにと雑草取りや水やりをしていたり、軒下で雛鳥にせっせとエサを運んで子育てしているツバメの親鳥を見て、命の尊さをひしひしと感じたりしていたゆう子さん。「お父さんに心配をかけてはいけない」「もしかしたら強がっていると思わせてしまったかもしれない」と悩んでいたゆう子さん。でもね、あの時の自分を許せなかった気持ちを忘れないでいたからこそ、思いやりのある素敵な大人になったのだと思います。天国のお母さんも、安心して喜んでいますよ。きっとね。

佐々木 教子(北区立浮間小学校講師 こども支援士)