#しつけと教育
調子外れの歌を歌う4歳の息子
4歳の息子は歌が大好きです。しょっちゅう大声でアニメの歌を歌っているのですが、ただ怒鳴っているだけのようで、音程もひどいのです。このままでは音痴になるのではと心配で、「やめなさい」というのですが、やめません。やめさせるほうがいいか、正しい音程になおさせるほうがいいのでしょうか。(もっくんのママ)
もっくんは、まだ4歳。歌っている音程がひどくても、同じような年齢のお子さんと比べて、音楽的な感覚が劣っているとかヘンだというものではないと思います。だんだん、音程も正しく歌えるようになっていくでしょう。
ご心配の向きを考えて、二つ、お話ししますね。
1)まず「声は、どのようにしてでるのか」というお話。人間の声は,肺からの呼気が声帯を振動させて出るのです。声帯は、気管の出入り口にある「声を出す筋肉のヒダ」です。
4歳のもっくんは、声帯筋を含めて、喉の回りの筋肉をまだあまり上手に動かせないのですね。4歳児としてはあたり前だと思います。もっくんがもう少し成長されれば、声帯は上手にストレッチされ、音域は自然と伸びていって、音程も正しく歌うことができるようになるでしょう。
2)もう一つ、「相対的な音感」について説明させてくださいね。
「絶対的な音感(絶対音感)」というコトバを耳にされたことがおありでしょう。それに対して、「相対的な音感(相対音感)」というコトバがあります。特別な音楽教育を受けなくても相対音感は、誰でも持っている音感で、「ある基準となる音が、高いか低いかが判る能力」の事です。これは、日々歌ったりピアノを弾いたりする中で、十分鍛えられていきますし、3歳から5歳くらいの間に意識的に訓練しないと身につかない「絶対音感」に比べて、年齢を問わず鍛えられる音感です。
この二点から考えて、もっくんの(やや調子の外れた)歌も、そんなに気にしなくていいと思いますが、もし、もっくんがいま音楽に興味を持っておいでなら、ピアノのお稽古はとても効果的だと思います。
「相対音感」を鍛えるためには、幼児期にピアノ教育にふれる事で、音の高さがさらに認識できるようになります。ピアノの先生のレッスンが、「絶対音感の教育」のように意識的に訓練をされないレッスンであっても、ピアノとあわせて歌ったり音符を五線紙に書くことで、とても良い音感教育になるでしょう。
でも、これは、「もし、音楽のレッスンに行かれるならば」のお話です。どうぞ今はもっくんに、自由に歌わせてあげてください。もっくんが歌が大好きで毎日楽しく歌っておいでなら、成長すれば、自然に音程も正しく歌えるようになるはずです。あまり心配なさらずに、幼いもっくんの(今しか聞けない不思議な)お歌を、ご家族みんなで楽しまれたらどうでしょう。
榎本太麻子(ソプラノ歌手:二期会)