#しつけと教育
母親の私より、お祖母ちゃんになついています
長い間、母の私が入退院を繰り返したため、とうとうシングルマザーになって、実家で暮らしています。今は体力も回復したので、昼間は子どもを保育園に預けて働いていますが、生活のため夜も働く必要があって、母に娘を見てもらっています。娘はすっかりお祖父ちゃんお祖母ちゃん子になってしまい、仕事が早く終わった時など私が保育園に迎えに行くと、保母さんやお友だちの前で。「おかーさんキライ、お祖母ちゃんと帰る」と泣き出してしまいます。日曜日は、お祖父ちゃんお祖母ちゃんの部屋へ、遊びに行ってしまいます。これではよくないと思います。叱るべきことは、きちんと??っておかないと、よいこと悪いことを区別できるように何かと??るのですが、「おかあさん、すぐ怒るからキライ」いいますし、お絵描きなどよくできた時にほめると「おばあちゃんにほめてほしいの」と言います。正直、とても悲しいんです。赤ちゃんの頃、ろくにだっこしてあげられなかったことが、悔やんでも悔やみきれません。(3歳8か月の娘の母親)
「おかーさん、キライ」と先生やお迎えにお母さんたちの前で泣かれたのは、さぞショックだったでしょう。でも、3歳8か月のお子さんにして見れば、保育園での1日の集団生活は、楽しいことばかりではなく、ストレスや不安もたくさんあったでしょう。そうしたことに耐えて頑張った一日だったのですね。一番安心できるお祖母ちゃんに手を引かれて家へ帰る道は、どんなに嬉しい時間でしょうか。それが「しつけ屋さん」のお迎えの登場では、泣きたくなるのも当然ではないでしょうか。
「叱るべきことは、きちんと??っておかないと。よいこと悪いことを区別できるように何かと??るのですが」とお母さんは言われますが、3歳8か月の子どもは、ダメ、ダメと叱られるほどの悪いことをそんなにもするものでしょうか。しかも、「ダメ」と言われて納得するのは、愛情と信頼で結ばれた関係があってこそでしょう。
子どもが、可愛がってくれる人や長い時間一緒に過ごす人を信頼し、大好きと思うのは自然なこと。その点ではお母さんは現在、残念ですが、お子さんにとってはまだ第3者。しつけ手を担おうとしておられるお母さんを、「すぐおこるから、キライ」は、お子さんの自然なお気持ちでしょう。「赤ちゃんのとき、ろくにだっこしてあげられなかった」のはお母さんのお気持ちに過ぎないと思います。十分な「関係」のできていない場合は、しつけ(よいこと・悪いこと)をするよりまず、温かく優しい第3者になろうとすることではないでしょうか。
それよりも、病後のお体で昼も夜も働く。今お母さんは、それで精一杯なのではありませんか。ご両親のしつけに多少のご不満はあっても、しばらくはお任せして、ご一緒にお子さんが安心して過ごせる家庭を作って行かれることではないでしょうか。
深谷和子(東京学芸大学名誉教授:こども支援士)