#しつけと教育
死を恐れる4歳児
半年前に、とてもかわいがってもらっていた祖母を亡くしました。それ以来、人の死が胸に焼き付けられたのでしょうか、「ぼく死ぬのはいやだ」とか「ママ死なないで」「ミーちゃん(猫の名)が死にそうだ」とか、やたらに死という言葉を口にするようになりました。時々は感情が高ぶるのか、泣き出すこともあります。家族は「誰でも生命は終わりがあるんだから」などと、納得がいくように話して聞かせるのですが、本人は受け付けないのです。どうしたらいいでしょうか。 (4歳児の母)
常に身近にいる大切な人が亡くなることほど、悲しいことはありませんね。大好きなおばあちゃまが突然いなくなりショック症状が続いているお子さんだけでなく、お母さまが経験された喪失感、心の痛みも大変大きかったことと、お察し致します。
初めて身近に「死」を体験されたお子さんにとっては、愛情を注いでくださったおばあちゃまが突然姿を消しもう二度と会うことができない、と言うこと自体が理不尽で不条理なこととして映っているのでしょう。漠然とした「死」というものへの恐怖心が強まり、フラッシュバックを引き起こしている可能性もありそうですね。
脈絡なく出てくる死への言及や、感情の高ぶりはお母さまを一層不安にさせ、早く忘れさせたいとの思いを強めていらっしゃるのではないでしょうか。
確かに大人になれば、生命の理を受け止め、悲しさ寂しさを乗り越える道のりを探ることもできるでしょう。誰もが等しく、いつかは経験することと、理性は諭します。でも否が応でも「死」は、突然の変化を残されたものに押し付けるのであり、予期せぬ不慮の事故など、大人であっても時としては不条理な、理性だけでは超えられない場合があるのもまた真実なのだと思えます。
しかも、4歳という年齢のお子さんは、まだ理性に訴えるには小さく脆弱な存在です。お母さまはどうぞ、不安を一旦抑え、むしろお子さんの心が和らぐよう声をかけ、見守っていきましょう。
生命とは果てし無く続く大きな魂の営みでもあります。実際に会うことは叶わなくても、家族の心にはおばあちゃまが生き続けていること、空の風に乗ってどこにでも皆と一緒におり、いつも見守って下さっていること、お子さんが話しかければ必ず応えてくれること等々。お母さまが動じなければ、お子さんの心も静まり、やがて落ち着きを取り戻してくるでしょう。
人の死を通して経験した悲しさから、やがて人を思いやり、痛みを知る心が芽生えてきます。死があるからこそ、今を生きる大切さにも気づかせてもらえます。「死」を避けるのではなく、おばあちゃまを偲び、お子さんと一緒に思い出を語る時間を作ってみましょう。日常の中に「死」を経験することが少なくなってきた現代、おばあちゃまが多くを気づかせてくれるようにも思います。
近藤和子(サンメディカルクリニック津田沼・公認心理師)