#しつけと教育
ぐずでのんびりしている子
5歳の娘は何かにつけてグズなので、こちらがイライラしてしまいます。服を脱ぐのも、食事をするのも、おもちゃを片付けるのも、とにかく、何から何までのんびりやっているので、幼稚園でもいつもビリのようです。主人がどちらかというとそういうタイプなので、似たのかと思いますが、私はテキパキしているほうなので、本当にいやになってしまいます。(5歳児の母)
思い出話をさせてください。もう40年以上も前になりますが、私が筑波大学に助手として赴任した時、大学の臨床の講座には、A先生(教授)とB先生(助教授)がおられました。A先生はシャープで、何でもテキパキと仕事の速い方で、B先生はグズではないけれど、のんびり型の温かい方でした。
毎朝A先生は、出勤されるとまず事務室に寄られ、事務の方に「これ、ついでの時に出しておいてください」と家から持ってこられた封書を事務の机の上に置かれ、2階の研究室に上がって行かれます。ところが15分も経たないうちに、何かの用事で下りてこられて、先ほどの郵便物がそのままになっていると「あ、これ、ぼくが出しておきますから、いいです」と引き取って行かれるのです。事務の方は、お昼休みしか外出ができません。それが度々なので、困ってしまって、そのうちA先生が郵便物を置かれると、こっそり引出にしまっておくようになりました。
A先生は仕事が早いだけでなく、会議の時に予定を立てるのがお好きでした。のんびり型のB先生は決めるのがお嫌いで、「A先生、まだ先のことですから、後で決めましょう」と言われるのですが、A先生は「B先生、今決めても、必要があったら変更すればいいのですから」と、そうしたやりとりが度々でした。A先生は精力的に仕事をされ、本も何冊も出されました。B先生は、内地留学(1年間の出向)をされていた小中学校からの研究生の先生の面倒をよく見ておられ、読書会や勉強会を開いてお世話をされていました。お2人とも故人になられましたが、懐かしい思い出です。
人にはタイプがあります。のんびり型とテキパキ型、それぞれに持ち味があるのではないでしょうか。お子さんはまだ5歳。お母さんの目からは、グズでのんびりと映るのかもしれませんが、この先、大人になられたら、どんなタイプになっておいでかはわかりません。テキパキ型ものんびり型も、それぞれに持ち味があるのではないでしょうか。
それにお母さんは、ご主人から、せっかち過ぎて「もう少し、のんびりした奥さんだったらいいのに」と思われているかもしれません。お子さんの方でも「お母さんのそばにいると、なんだか気持ちが落ち着かないな」とお思いかもしれません。
では私は?子ども時代に「おっとりしたお子さんですね」と言われていたはずなのに、A先生のトシをはるかに超えた今、何でもすぐやってしまいたがる。「必要があったら、変更すればいいのですから」と予定を組んで、多分、周りを困らせているのではと思います。
深谷和子(東京学芸大学名誉教授・こども支援士)