お問い合わせ

#しつけと教育

保育園で何も話しません

私は勤め始めて3年目の保育士です。母親が働くことになったので、4歳の百合ちゃんが保育園に入ってきました。初日からかなり固くて緊張感の強い表情をしていた子だったのですが、2日目にお漏らしをしてしまってから今日まで3か月、何も話さなくなりました。保育者が話しかけると、うなずいたり首を振ったりなど意思表示はするのですが、声が出ません。今は登園を嫌がることもなく、友だちに誘われると園庭に出て滑り台などの固定遊具で遊びます。室内ではパズルが好きなのかよくやっていて、全部はめてしまうと保育者に見せに来ます。家族は両親と本人だけで、家に帰ると保育園であったことなどをよくおしゃべりするのだそうです。園でも、一日も早く話せるようになってほしいのですが。(新人保育士)


3年目の保育士さん、百合ちゃんのことを一生懸命に考えているのですね。少し百合ちゃんの心を考えてみましょうか。

百合ちゃんはこれまで4年間、お母さんに守られながら自分のおうちで生活していたのに、保育園という大きな建物の中で知らない大人に預けられることになったのです。しかも、おうちには自分1人しか子どもはいなかったのに、ここにはたくさんいる。だいじょうぶかなぁって、登園初日はとても緊張し、不安だったことでしょう。大人である保育士さんでさえも、勤務初日は同じだったはずです。トイレだって、おうちだったら簡単に行けたでしょうに、保育園では、いつ行ったらいいのかなぁ、どうやって先生に言ったらいいのかなぁ、「トイレ」って言おうとしたのに。お友だちに話しかけられちゃった、などと小さな心であれこれ悩んでいるうちに、ちょっと失敗してしまったのではないでしょうか。慣れてしまえばなんでもないことですが。

それでも百合ちゃんは毎日登園して、お友だちと遊んだり、保育士さんの問いかけに反応したりしています。未知の世界に足を踏み入れた百合ちゃんは、ここはいやなところではないなぁと思っている証拠です。集中してパズルに取り組むこともできています。大勢の中にいても、自分で好きなことをして過ごす時間を作れているのですね。

保育士さんが毎日笑顔で接し、お友だちが優しく誘ってくれていることで、百合ちゃんは安心して登園できています。今は無理に話をさせようとせず、周りの子どもたちと一緒に、百合ちゃんのうなずきや首振りから、しっかり気持ちをくみとっていてください。「くるくる回っておもしろいね」、「ブランコ楽しいね」、「このおいもおいしいね」、「夕焼けきれいだね」などと共通の体験を積み重ねながら、保育園で百合ちゃんがおしゃべりする日を、みんなで気長に待ちましょう。子どもたちと一緒に喜べるその日は、必ずやってきますから。

吉田 佳代(つくば市立東小学校教諭、こども支援士)