お問い合わせ

#しつけと教育

一人で寝られないのですが

4歳の男の子ですが、まだ一人では寝られません。そばにいて、私の手を握っていてほしいと言いますが、男の子なのにこんなことではと心配です。友人の子どもも4歳児ですが、8時になると一人でベッドに入れて,電気を消してしまうしつけができているそうです。自立心や独立心を養うためには、そうしたほうがいいでしょうか。(4歳児の母親)


自立心や独立心の強い子どもを育てたいとは、どの親にもある共通の願いでしょう。そのために親は子どもが小さい頃から、種々準備を始めようとするのですね。アメリカの親は、夜のお休みタイムになると子どもをベッドに入れて電気を消してしまうそうですから、お友だちもそれを真似たのでしょう。

アメリかには基本的に、大人と子どもの世界を分けることがいいとする文化があります。けれど日本にはその昔、親が同じ布団に入って小さな子を寝かしつける「添い寝」の風習もありました。沢山の子どもが次々と生まれ、母親が子育てどころか、家事はむろん農作業などの労働に一日中追われていた時代に、お母さんがそばにいて寝かしつけてくれる時間は、子どもにとって幸せなひと時だったことでしょう。むろんお母さんにとっても。

思い出したことを一つ。私が若い教師だった頃、学生たちとアメリカの小学校を見学したことがありました。時間中に一人の男の子が、後ろのロッカーからバナナを取り出して食べ始めたのです。日本だったら、おやつをもってくることが許されていたとしても、一人がそうしたら、みんなが、僕も私もとマネをするでしょう。おなががすいていなくても、つられて何かを食べ始める子もいるかもしれません。でもそのクラスでは、誰一人そうする子はいませんでした。驚きました。小学生でも、「自分」(個)がそこにあるのだと思いました。でもそれは、幼い頃から一人で寝かされるからではなくて、アメリカの文化(しつけも教育も含めて)が、トータルにそうした人間を育てているのでしょう。

でも、日米を問わず広く母子関係の研究者たちは、早くから親子の間で距離をとると、人間関係の基礎になる「愛着関係(アタッチメント)」の形成上に問題を生みやすいと指摘します。むやみにお友だちの子育てと比べないで、今はお子さんをやさしく包むお母さんでいて下さるといいですね。むろん4歳でしなければならない「しつけ」もいくつもありますが、今は「手を握っていてほしい」とせがむ4歳のお子さんが安心して眠りにつけるように、お子さんと小さくお話ししながら、手を握っていてあげるお母さんであっていいのではと思います。

やがてそれほど遠くない時期に、お子さんは一人で寝られるようになるでしょう。

深谷和子(東京学芸大学名誉教授・こども支援士)