#キッズ&ヤング
約束を破るお父さん
ぼくのお父さんはこの前の日曜日にディズニーランドにつれて行ってくれると約束したのに、またつきあいだよと言って、ゴルフに行ってしまいました。もう、しんじられません。どうしたら、お父さんが約束を守ってくれるようになるか、教えて下さい。(小3:けんじ)
お父さんが遊びに行く約束をしてくれていたのに,その日になって会社でのゴルフなどのお付き合いで行けなくなることが,何回もあったのですね。
大人の人たちは,あなたに「約束は破ってはいけない」といいながら,あなたとの約束が破られるのは,とてもつらいことですよね。
もちろんお父さんも,あなたとの約束を守りたいでしょうし,大人のおつきあいの中で,仕事をしてお給料(きゅうりょう)を家に持って帰るのは,あなたたち家族を守るために,とても大事なことですが,そういうことは,あなたもきっと,よくわかっていることだろうと思います。
そういう意味では,あなたがお父さんに約束を破られて,がまんするということが,お父さんのお仕事を助けることにもなっているのだということも,きっとよくわかっているのではないかと思います。でも,そうやっているうちに,「仕事をすることは誰かにがまんさせるものだ」,「仕事をすることは,だれか不幸な人を作るものだ」というふうに考えるようになると,「大人になって仕事をするのが楽しみだなー」と思えなくなるのではないかと心配しています。ですから,そういう時には,「私が大人になって仕事をするときは,不幸な人を作らずに,幸せな人を作るために仕事をするんだ!!」と,強く思うことも大事だろうと思います。子どもの時から強く思えば,それが実現しやすくなりますからね。
もう一つは,お父さんが約束を守れなかったら,別のことをしてもらう,という約束をすることはどうでしょう。お父さんも,あなたと遊びたいのだけれど,仕方なくがまんして,いやいや約束を破っているのですから,「約束が守れなかったときには,こうしよう」という約束を作っておけば,お父さんとしても気持ちが楽になれるかもしれませんね。あなたにとって,お父さんと一緒に遊びに行くのと同じくらいうれしい何かを約束してもらうように,話し合ってみるのもいいだろうと思います。
そのほかには,お父さんに,あなたのお父さんは一人しかいないこと,「お父さんと遊びに行く」ことは,お父さん一人にしかできないことを「ぼく(わたし)には,お父さんはお父さんしかいないんだよ。だから,お父さんと遊びに行くことも,お父さんとしかできないんだよ」と優しく言ってみるのもいいかもしれません。ここではあえて優しくいってみることも大事でしょう。なぜなら,あなたにとってのお父さんは一人しかいない,ということは,だれも疑うことができない,正しいことなので,お父さんによっては,すごく責(せ)められた感じをもってしまうかもしれないからです。責められた感じを持たずに,あなたからの愛情(あいじょう)を感じるタイプのお父さんだったら,どんどん言ってあげればいいでしょうし,自分を責めてしまうタイプのお父さんだったら,やさしく言ってあげるのがいいかな,と思います。
そのほかには,お母さんにも相談して,お母さんと作戦を作るのもいいかもしれませんね。もしもお母さんがいっしょに作戦を作ってくれないときには,「ぼく(わたし)が相談できるお母さんは,お母さんしかいないんだよ」と言ってみましょう。
いろいろと提案(ていあん)してみましたが,どれか一つでもうまくいくことを祈っています。
杉森伸吉(東京学芸大学教授・東京学芸附属大泉小学校校長)