#キッズ&ヤング
お父さんが亡くなりました
お父さんがしんぞうの病気で急に亡くなりました。お父さんは床屋ではたらいていて、お母さんも「かなちゃん(5歳の妹)が学校に行くようになったら、私もパートに出るわ」と言ってました。そして、スーパーでそう言ったら、「人手が足りないので、明日からでも来てください」と言われたそうです。
お父さんのお葬式の時、山形で大工をしているおじいちゃんが、「みんなでこちらにおいで」と言いました。でもぼくは学校を変わるのがいやだったし、みんなで相談して、こちらに残ることにしました。お母さんは、もうじきスーパーで働くそうです。でも、これからのことを考えると悲しくなります。休みの日には、みんなでコストコへ行って,表でホットドックを食べるのが楽しみだったのに。 (小5:りゅうた)
なんと言っていいかわからないけれど、元気だったお父さんが急に亡くなり、りゅうた君も、妹さんも、お母さんも、そして、山形で大工さんをしているおじいちゃんやおばあちゃんも、どんな思いでいるでしょう。人生にこんなことがあっていいのか。世の中が急にまっくらになった感じでしょうね。
これから先、お母さんがパートに出られる。家にいて専業主婦(せんぎょうしゅふ:家族のお世話をしていた人)だったお母さん。新しいお仕事をおぼえることや、職場(しょくば)での人間関係(にんげんかんけい)も大変(たいへん)でしょう。今まで経験(けいけん)しなかったような毎日が始まるのですね。
りゅうた君と妹さんは、学校と保育園で過ごす時間は変わりがないから安心ね。でも学校が終わったら、家にかえる。そこからりゅうた君にも、新しい生活が待っているのね。
りゅうた君は男の子。まだ5年生という言い方もあるけど、もう5年生。これからは、亡くなったお父さんの代わりをしなくちゃね。お母さんはパートのお仕事でがんばるけれど、りゅうた君には、「お父さんの代わり」をがんばってほしいの。5年生の男の子なら、それがちゃんとできるんじゃないかと、私は思います。
これからは、お父さんがお母さんを大事にしてあげてたように、りゅうた君がお母さんを大事にしてあげてね。お母さんの話し相手になって、学校での面白い出来事(できごと)とか、先生にほめられたこととか、毎日、いろいろと話してあげてね。
もう一つ、お母さんの今までの家でのお仕事は、食事作りとお片づけ(おそうじ)だったと思うの。食事作りはりゅうた君にはむずかしいけど、お片づけの係ならできるでしょ。りゅうた君のお家は知らないけれど、お母さんが帰ってくる時間になったら、まず、玄関(げんかん)のクツをきちんと並べておくの。つかれて帰って来て、玄関にぬぎすてたクツがちらばっていたら、「これから家の仕事がはじまるのか」って、お母さんはため息が出るかもしれない。それから、いつもお家の中に、ぬいだ洋服やおもちゃや本が散らかっていないかな。お母さんが帰るころになったら、家の中をきちんとかたづける。できたら、テーブルにお箸(はし)位、並べておくのもいいかもしれない。どう?カンタンでしょ。むろん宿題も勉強も、お母さんに言われないうちにちゃんとしておくのよ。
コストコのホットドックの話。もう7.8年もしたら、りゅうた君が運転免許(うんてんめんきょ)をとれる年になるから、日曜日にはお母さんとかなちゃんを車に乗せて、コストコの表の広場でホットドックを食べることもできるでしょう。7.8年なんてすぐですよ。
がんばれ、りゅうた君!お父さんの分まで、お母さんとかなちゃんを幸せにしてあげてね。
深谷和子(東京学芸大学名誉教授・こども支援士)