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#キッズ&ヤング

ピアノよりサッカーがしたいのに

ぼくはようちえんの時からピアノをならっています。でもぼくはピアノはあまり好(す)きではありません。でもお母さんは「ためになるからピアノに行きなさい」といいます。ぼくは、友だちみたいに毎日サッカーがしたいのに。(小1:つかさ)


どうして、君のお母さんは、つかさくんにピアノをならわせたいのかな。「ためになるから」だけじゃ、わからないよね。「なんのためになるの?」って、1度(ど)聞いてみるのもいいけど、お母さんは、きっと、つかさくんにわかるような説明(せつめい)はできないんじゃないかな。

 これは私の推測(すいそく)なんだけど、お母さんは小さいころ、ピアノがうまい友だちを「すてきだな、いいな」って、あこがれてたんだと思うの。学芸会(がくげいかい)とか、今だったら学習発表会(がくしゅうはっぴょうかい)かな。何かの時に、みんなの前でピアノを上手にひく友だちにあこがれてたんじゃないのかな。だから、ようちえん生になったつかさくんに、ピノを習わせたんだと思うよ。子どもの自分ができなかった夢(ゆめ)を、つかさ君の上に見ようとしたのかな。ちょっと難(むずか)しいかもしれないけれど。

 でも、お母さんはお母さん、つかさくんは、つかさくん。そのうちお母さんも、ピアノをじょうずにひける子もいいけれど、友だちと毎日サッカーに夢中(むちゅう)になってるつかさくんも、いいなと思うようになるんじゃないかな。

ピアノをつづけるか、サッカーして友だちと毎日遊ぶか。どっちにするかは、つかさくんが決(き)めていいんじゃないかな?もう、1年生だもの。お母さんに、「ぼくは、ピアノには行かない。友だちとサッカーをするんだ」と、きっぱりいうのよ。その時お母さんば、自分の夢がこわれて、ちょっぴり悲しいかもしれないけれど、そのうち、「サッカーの大好きなつかさくんでよかった」と思うようになるんじゃないかな、きっと。

ちょっと難しいかもしれないけれど、「親の歴史(れきし)は、子どもへの失望(しつぼう)の歴史」というコトバもあるの。でも子どもは、親を何度も何度も失望させながら、ちゃんとした大人になっていくものなの。

深谷和子(東京学芸大学名誉教授・こども支援士)