#キッズ&ヤング
男子がそうじに協力的でありません
今度クラスの美化係になりました。でも、男子がそうじに協力(きょうりょく)してくれません。やたらに当番をサボろうとするし、そうじの時もぐだぐだしています。「ちゃんとやってよ」とか言っても、「うっせーな」といやな顔をされるだけです。どうしたらいいですか。(小6:さおり)
昔のことになるけれど、私が子どもの頃も、やっぱり男子はよくそうじをサボってました。なぜか女子の方がマジメだったの。男子の中にも、そうじをマジメにやろうと思う子がいたと思うんだけど、でも仲間がサボるので、ついそれに合わせてしまっていたのかもしれない。
心理学に、ちょっと難しいけれど「同調圧力」(どうちょう あつりょく)というコトバがあります。「力をもった他人(たにん)に、つい自分を合わせてしまう」傾向のことで、この場合「力をもった」人に「同調する」とは、
@多数派(多くの人)のしていることに同調してしまう場合
A自分が好きな人、尊敬している(みりょくのある)相手に同調してしまう場合
の2種類があるとされています。
たとえば大人が友だち何人かと食事に行って、何を注文しようかという時に、だれかが「とりあえず、ビール」というと、ほかの人も、「私も、私も」ということになっていく。よくある風景です。ほんとうは「私は、ワイン」と言いたい人がいても、一人だけワインとは言えなくて、「集団の圧力」に負けてしまうのですね。
だから、男子にそうじをサボる子が多いと、本当はまじめにそうじしたい男子がいても、仲間に合わせて自分もサボってしまう。集団の圧力に負けてしまう。そうでないと「あいつはヘンなやつ」と仲間から言われそうな気がしてコワイのね、きっと。
「同調圧力」のもう一つは、自分が好きな相手に同調してしまうことで、スポーツがうまいとか、性格がいいとか、勉強がよくできるとかで、仲間に「人気のある男子」がそうじをサボると、男子はつい、その子のしていることだからと自分もサボってしまう。女子もそう。でも反対に、もし女子の中で「人気がある子」がマジメにやってると、女子もみんなそうじをちゃんとやるようになったりね。
「自分」の考えが、まだしっかり固まっていない子どものうちは、こうした「圧力」に負けて、ついそっちに引っ張られてしまったりします。でも大人になると、自分がサボりたければサボるし、まじめにそうじしたければ、そうするようになるの。「自分というもの」がしっかりできていくから。
だからさおりちゃんも、イライラするだろうけど、今はサボる人の分までそうじをがんばるのもひとつかな。たぶん先生に、「男子がサボります」と言いつけてもきき目はなさそうだし。
そんなさおりちゃんを見て、「えらいなぁ」と心の中で思ってくれる友だちもいるだろうし、ひょっとして担任の先生も、遠くから「さおりちゃん、がんばってるね」と思ってくれるかもしれない。そのうち男子も少しずつおとなになって、「やっぱりそうじはちゃんとしなきゃ」と思うようになるんじゃないかな。
深谷和子(東京学芸大学名誉教授 こども支援士)